■死因究明制度に関する提言を発信!!

12月19日に設立した「異状死死因究明制度の確立を目指す議員連盟」も、有識者を招いての勉強会や視察、コアメンバーによる打合せ会などを含め、全14回の会合を持ち、本日、議連としての提言を発信しました。
 
死因究明制度の確立は、国民の皆様方にとって「最後の医療」であり、いわば命の尊厳を守る最後の砦であります。
提言の骨子にもあるように、早急に「死因究明推進基本法(仮)」を制定し、現在の脆弱な死因究明体制を強化していくことを目指します。

提言の詳細については、下記にてご確認ください。

また2011年8月には新たに死因究明制度の解決策の提案を行いましたので参考にして頂ければ幸いです



5月15日付長崎新聞2面
異状死死因究明制度の確立に関する提言


死因の究明は「最後の医療」であり、いわば命の尊厳を守る最後の砦である。公衆衛生の観点から重要であるばかりでなく、犯罪や事故の見落としを防ぐためにも大きな意味を持つ。また正確な死因究明は、行政上の有効な資料である死因統計の価値をより高める。
 今、その日本の死因究明制度がまさに危機的状況にある。日本で年間に亡くなる方は100万人強であるが、そのうち死因が分からない、いわゆる異状死の数は年々増えつつある。平成20年は約16万人で、10年前の1.5倍である。
 私たちは、関係者からのヒアリングや視察を通じ、異状死の約9割は体表の観察のみに止まること、警察の検視体制が十分ではないこと、死体を検案する医師は必ずしも専門家ではないこと、死因究明のために必要な解剖については、司法解剖・行政解剖とも体制が脆弱であり、諸外国に比べ我国の解剖率は極めて低いことを知った。特に大学法医学教室においては国立大学の法人化の影響もあり、予算や後継者の不足に喘いでいること、死因究明の新たな手段として、CTやMRI等を活用した死亡時画像診断(Ai=Autopsy imaging)が注目されていること、各地域で地方自治体・警察・大学法医学教室などが連携し、司法解剖・行政解剖一体となった独自の取組が見られることなどあらたな問題点等を認識した。
 本議連では、こうした現状について議論を重ねた結果、新しい異状死死因究明制度の確立のためには、段階的に諸問題に取り組むことが必須であり、そのためには、まず死因究明推進基本法(仮)を制定した上で、第1期・人材の育成 第2期・体制、施設の整備 第3期・制度の見直しが継続して取り組まれることが必要であるとの結論に達した。
上記の順に段階的に取り組むことが重要であるとの認識の下、ここに次のとおり提言を行うものである。

1 死因究明推進基本法(仮)の制定

  まず、死因究明制度の必要性と基本理念、その実現を図るための総合的・体系的施策と政府の推進体制等を明らかにすべく「死因究明推進基本法(仮)」を制定する。基本法では、
(1)死因究明に関する基本理念
(2)死因究明に関する政府における検討・推進体制
(3)死因究明に関する総合的・体系的推進計画の策定
(4)死因究明に関する具体的な検討・推進事項
(5)死因究明に関する措置の具体的な実施時期
等を定めるものとし、本提案に則った内容とする。
本基本法を制定するために、与党各党の政策機関においてただちに組織を立ち上げ、検討を行うこととする。
なお2以下に記す各項目は、基本法の具体的な検討・推進事項となるとともに、政府に対し、すみやかかつ先行的な実施を望むものである。

2 警察の検視体制の充実

  警察では、刑事調査官や補助者の増員を進めるなどの取組は見られるが、取り扱う死体数が増加する中、誤認検視を防ぐためには、今後も刑事調査官や補助者の増員、検視に効果的な装備の充実を図り、体制をさらに強化すべきである。また、検視に立ち会う医師(警察医)との協力体制をさらに強化すべき方策を講じる。

3 医師の検案能力の向上

  検案を行う医師は、必ずしも異状死に関する専門的知識を持っているとは限らないのが実情である。大学医学部での法医学についての講義、日本法医学会の「死体検案認定医制度」や厚生労働省の「死体検案研修」などによって、医師の死体検案能力を十分に高めるべきである。
  また、解剖補助者について医師以外の独自の資格制度創設を検討する。

4 法医学の教育研究拠点の整備

 解剖が最も確実な死因究明の方法であることに疑いはないが、司法解剖を担う大学法医学教室の多くは、法人化の影響もあり定員・予算の縮小、法医に進むべくインセンティブも低下し、後継者も確保できず存続の危機に立たされている。そこで、インセンティブの向上とキャリアパスの形成を図るため、①法医学全般 ②薬中毒学 ③Ai ④DNA鑑定 ⑤病理解剖など、法医学に関するカリキュラムを有する人材養成の拠点整備(法医育成センター:仮称)など教育研究環境の充実、大学医学部入学定員の増員等による法医の確保、司法解剖にかかる謝金等の外部資金の活用も含めた処遇改善を行うなど、先行的にモデル地区を10箇所程度選定し、大学法医学教室への支援を強力に行う必要がある。

5 行政解剖を担う体制の充実

  監察医制度が運用されている一部の大都市圏を除いて、行政解剖を担う確立された体制はない。他方、法医学教室を中心に警察・地方自治体等が連携し、司法解剖・行政解剖一体の独自の取り組みが各地で見られるが、これは現在の行政解剖の体制不備に対する自助努力として取り組まれているにすぎない。したがって、将来的には監察医制度に倣った体制作りを全国に展開することを目指し、国から地方自治体に十分な財政支援等の異状死死因究明の体制の充実を進め、死因究明に生じている著しい地域間格差を解消すべきである。

6 死亡時画像診断(Ai=Autopsy imaging)の活用

Aiは解剖前に死体の内部の状況を把握することができ、スピード面やコスト面でも優れており、解剖すべき死体のスクリーニング効果や解剖の補助手段としての効果が期待される。今後、Aiの更なる向上や普及に必要な人員・施設・財源の確保を図るべきである。さらに、Aiセンター(仮)等、法医・病理医・放射線医等が連携して、死因究明が効果的に行われるしくみを作るべきである。

 なお、以上の諸措置を先行的に推進するには財政的な裏付けが不可欠であり、「骨太の方針2009」に死因究明制度の強化を一つの柱として盛り込んだ上で、十分な予算を確保し施行すべきである。
   

平成21年5月14日

異状死死因究明制度の確立を目指す議員連盟
会長 保岡 興治

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